猫街221b - Football Manager -

ゲーム、本、音楽や映画。そこに日常のささやかなできごとを絡め、物語仕立てに書いています。いまは「Football Manager」というゲームのプレイ日記が中心です。

神宮球場でフットボールマネージャーについて考える

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3回うら。
2死ランナーなし。
東京ヤクルトスワローズの3番打者、山田哲人が打席にはいる。
この場面できみはうごいた。
となりで観戦している猫さんに、思いきって聞いたのだ。
ここでわれわれはなにをしているのだろう、と。

「きぶんてんかん」と猫さんはこたえる。「さいきん、ずっとなやんでるみたいだったし。いつもとちがうフットボールに触れて、きもちをリフレッシュするですよ」
いやいや、ときみは反論する。いつもとちがうというか、これ野球だよね。フットボールですらないよね。
「そうともいうにゃ」
そもそも、しごとを放ったらかしにして、にほんでスポーツ観戦するなんて。それはかんとくとしてありなのかな。
山田はそとに逃げるスライダーをうまくとらえる。一二塁間をぬけるシングルヒット。
「でも、きみのかかえている問題もありえないものでしょ。ありえない問題をかんがえるときは、ありえない場所にいくのもありだよ」
いや、だからって。
「これをアリエン・ロッベンの法則といいます」
ほんとかなあ。

クリスタルパレスのかんとくになって数日後。
きみはかんとく室のドアをはずした。
ドアはつねに開かれているよ、というアピールではない。
つぎからつぎへと選手がどなりこんでくるので、ドアがあるとかえってあぶないのである。
シーズン終了まであと数か月の時点で、無名かんとくがやってきて、堅守速攻のチームをポゼッション重視のチームに作り変えようというのだ。反発がないとは思っていなかった。
しかし、選手のふまんは、想像力のそとがわ、思いもよらぬ角度からふってきた。

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ロッカールームでの口論がニュースに出ちゃったです。移籍を要求したマーティン・ケリーと、それを拒否したかんとく。ケリーは腹を立てている、とのこと

ぜんかい登場した副キャプテンのスコット・ダン、そしてうえの画像にあるマーティン・ケリー
ふたりだけではない。
レギュラークラスの選手のほとんどが、ビッグクラブに行きたいので許可をくださいと言ってきたのだ。
しかも、「あの約束はどうなったんですか? ビッグクラブにはやくいきたいんですけど?」と、ずいぶんまえから話が進んでいた口ぶり。
就任したばかり。まだ1試合もけいけんしていない時点である。
もちろん、ビッグクラブからのオファーなんてひとつもない。
ふしぎ。

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6回のうら。
山田のソロホームランで、1-1の同点。
「いいよね、山田。山田哲人」と猫さん。「ベースボールマガジンが出した『スポーツアルバム・山田哲人』。さわやかすぎてこわいくらいだよね」
それってさ、きみはふたたび抗議する。リフレッシュとか関係なくて山田を見たかっただけじゃないの。
猫さんはごまかす。
「ああ、畠山が打席にはいったよ」
だから?
「『村上さんのところ』(村上春樹・答えるひと、フジモトマサル・絵)の『猫はお歌を唄わないの』という質問の回答読んだ? それによると、このひとがホームランを打つと『猫はみんなで路地の奥に集まり、緑の傘を振って「東京音頭」を歌うんだよ』だって!」

まあ、いいや。
いまのところ、ジェームズ・マッカーサーとはよい関係をたもっている。キャプテンで、セントラルミッドフィールダーで、戦術のかなめ。かれさえいればきっとなんとかなる。
そんなきみの気持ちをさっしたのだろう。
猫さんが魔法の猫じゃらしをひとふり。
気がつくと、いつのまにか、となりの席にジェームズ・マッカーサーがいる。いきなりつれてこられて混乱しているようだ。
「なあ、かんとく。なにがなんだかさっぱり――」
いいんだよ、ジェームズ。なにもいわなくていいんだ。
「いや、でも――」
だいじょうぶ。すぐ帰してもらえるように、猫さんにたのむから。
「……そのまえにこれだけは言わせてくれ。つたえるのがおそくなっちまったが、おれのしょうじきな気持ちだ」

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「こんなことを言うのは心苦しいんだが、先日、ついに降格してしまったからにはこうするほかはない。ビッグクラブへの移籍を許可してくれ」

きみもなの!?
降格したのは去年でしょ。
オファーもきてないってば(涙)。

9回うら2死まんるい。
1点ビハインド。バッターは畠山和洋
緊張のいっしゅん……と思ったら、きみのじぶんのへやにいた。
ここで? ここで帰ってきちゃうの?
「だって帰りたがってたし。野球じゃリフレッシュできないんでしょ」
いや、でもさ。いやしくもスポーツにかかわるものとして、これは最後までみるべき場面かと。
「でも山田はもう出そうにないんだにゃ」
きみはため息をつく。
あきらめてベランダに出ると、路地のおくで猫たちがおどっていた。
きっと畠山はホームランを打ったのだろう。
どれほど遠くはなれていても、ひとも猫も、どこかでつながっているものなのだ。