猫街221b - Football Manager -

ゲーム、本、音楽や映画。そこに日常のささやかなできごとを絡め、物語仕立てに書いています。いまは「Football Manager」というゲームのプレイ日記が中心です。

猫さんへの手紙② ~監督には2種類しかいない

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監督には2種類しかいない。クビになった監督と、これからクビになる監督だ。
――ハワード・ウィルキンソン――

右手の肉球で、ホットミルクがたっぷり入ったマグカップを
左手の肉球で、きみからの置き手紙をがっしりつかむ。
前回からの続きだにゃ。ごくごく」
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「監督には2種類しかいない。クビになった監督と、これからクビになる監督だ」

ハワード・ウィルキンソン(Howard Wilkinson)の言葉です。
ウィルキンソンは、80年代の終わりから90年代半ばにかけて、リーズ・ユナイテッド(現在はイングランドの2部リーグ所属)の監督を務めた人物。
1991-92年シーズンには、イングランドの1部リーグで優勝し、最優秀監督賞に輝きました。

フットボールの監督の立場は、とても不安定。
どれほど勝利を積み重ねても、どれほどファンに愛されていても、ささいな理由であっさり首を切られます。
(戦術が地味だから、スター選手を使わないから、会長の仲たがいしたから、などなど)
カルロ・アンチェロッティジョゼ・モウリーニョといった知名度の高い監督でさえ、例外ではありません。
そんな監督業の哀しさと可笑しさをうまく表現した名言として、ウィルキンソンの言葉はいまも多くの人に引用されています。

さて、この言い回しをわれわれの住むこの世界(Football Manager 2015)に当てはめるとどうなるでしょう。
きっとこんな感じだと思うのです。

「選手には2種類しかいない。重傷を負った選手と、これから重傷を負う選手だ」

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その後に続くぐちを読み、猫さんは思い出した。
こんな試合があった。
試合開始2分で、左サイドバックが重傷を負った。交代で選手を送り込むと、数分後に今度はその選手が重傷。下部リーグではベンチに入れるのは5人まで。サイドバックをこなせる選手はもういない。しかたなくフォワードの選手を投入すると、その選手もすぐさま重傷を負う。あっけにとられていると、前半終了間際に別の選手がレッドカードで一発退場。交代枠がもう残っていないので、⒑人で戦っていると、後半開始そうそう中盤の選手がふたり軽傷、そのうちひとりはのちほど重傷に。軽傷の選手を含めて、ピッチには9人しかいなくなってしまうのだった。
だが、大敗の予感とはうらはらに試合は均衡する。
なぜなら、相手チームも同じく、重傷・軽傷・レッドカードのオンパレードの末、8人でプレーしていたからだ。
ここまでひどくないにしても、このような試合が月に2~3回ある。

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9月時点での負傷者一覧(ほんの一部)

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レ、レベッカ、笑顔はいいから仕事して……
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どんなふうに成長するだろう、どんな選手に育つだろう。
そんなふうに見守っていた選手たちが、つぎつぎと重軽傷を負い、離脱期間はときに32週にも及ぶ。
ケガをしてしまうと、試合に出られないだけでなく、能力値が下がります。
これでは育成の喜びが、blah-blah-blah、あれ、blah-blah-blah ...

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「リーズというと、あれだにゃあ。ウィリアムソンからはちょっと時間をさかのぼっちゃうけど、映画『くたばれ!ユナイテッド -サッカー万歳!』(2009年)を思いだすにゃあ。

「この『ユナイテッド』はハイドのすぐ近くにあるマンチェスター・ユナイテッドではなく、リーズ・ユナイテッドのこと。マイケル・シーンがあの伝説の監督ブライアン・クラフを演じていて、リーズの監督ドン・レヴィーとの関係がすごく良かった。レヴィ―は当時強豪だったリーズの監督で名将と崇められている。いっぽう、クラフは2部のダービー・カウンティを率いる無名監督。その2チームがFAカップで対戦することになり、レヴィ―をリスペクトするクラフは、わくわくして、燃えに燃えて、試合が待ち遠しくて仕方ないんだにゃ。

「寒風吹きあれるおそまつな練習場で、『レヴィ―は対戦相手を偵察して分析して丸裸にする監督だから、きっといまもおれたちの練習をどこかで偵察しているに違いない』と嬉しそうにきょろきょろしている場面とか、試合後に対等の監督として語り合うために特別なお酒を用意しておく場面とかすごく良かった(うろ覚えだけど)。じっさいはまったく相手にされてなくて、偵察なんてされなかったし、試合後に語り合うどころか握手すらしてもらえなくて、そのときの屈辱というか怨念というか、それがクラフを名将へと押し上げる原動力になったんだよにゃあ」
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……ええと、なんだか読んでもらえていないような気もするので、ここでお手紙を終わりにします。
最後に、いつも一緒にいてくれる感謝の気持ちとして、猫さんの絵を描きました。
気持ちよさそうに眠っている場面の絵です。

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「ばっ……」と猫さんは言う。怒っているようだ。「なにこれ? ぜんぜん似てないし、へたすぎるし、そもそも眠っている場面じゃないし! いくらなんでも絵心なさすぎだにゃっ!」
手紙をゴミ箱に投げ入れ、鼻息あらく、部屋の中をうろうろ。
舌で身づくろいをして、耳を後ろ足でかいて、それから猫さんはゴミ箱に身体を突っ込んで手紙を取り出す。
紙についたしわをせっせと引き伸ばし、手紙を大切なものを入れる猫箱にしまった。

スフィンクス座り。
目をゆっくりと閉じる。
そして、思う。
はやく帰ってこないかな、と。