猫街221b - Football Manager -

ゲーム、本、音楽や映画。そこに日常のささやかなできごとを絡め、物語仕立てに書いています。いまは「Football Manager」というゲームのプレイ日記が中心です。

北極星を探せ、魔法のキオク、毎日が1895

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(C)Makoto Shinkai/CMMMY

ふしぎなふしぎな魔法の猫じゃらし。
ひと振りすると、まばゆい光ときらめきが。
輝きの中から現れたのは、スフィンクス座りの猫さんと、ipodに姿を変えた猫じゃらし。
イヤホンもコードもなにもなく、心に、身体に、ちょくせつ音楽が流れこんでくる。

口をあんぐりと開けてそれを見つめる、新入りのファン。
その横をいきおいよく通り過ぎるのは、おなじみのトニー。
練習場を突っきり、猫さんの座るベンチに腰かける。
「よお」とトニー。「この間は大活躍だったみたいじゃねえか」

とじた目をすこしだけ開ける猫さん。
ひと呼吸おいて、ベンチに座ったトニーを音楽が包みこむ。
それは熊木杏里の歌う「Hello Goodbye & Hello」。きみのPCに入っていた曲を、猫じゃらしにダウンロードして聴いているのだ。
好きな映画の主題歌だった。
この歌が流れるシーンではにゃーにゃー泣いた。涙がぼろぼろ流れ落ちた。それをからかわれると、猫さんはこう答えたという。
いい年をしたいっぴきの猫が、映画や音楽、小説や絵、だれかのことばや思い出、手触り、世界のさまざまな美しいものや哀しいものに涙を流す。それのどこが恥ずかしいことなのか、と。
数年後の未来、きみはこの歌のことを思い出すだろう。
だが、それはまだ先の話である。

あの朗読の最後、1895年ってなんだ? その年に何があった?」
猫さんは答えない。
眠っているようにもみえる。
猫という生きものは聞こえないふりがひじょうにうまい。
「そうか、そうだよな」
トニーは確かめるようにうなずく。
「わかってるさ。そんなことより、おれの『注目選手紹介!』を聞かせてもらいたいんだろ」
目を開けたときは遅かった。
すでにトニーは選手紹介のための助走体勢にはいっていた。
トニーが暴走する瞬間、猫さんは美しい映画を見た夜のことを思い出す。涙がすっかり流れ落ちたあと、きみに同じ質問をされたのだ。
1895年になにがあったのか、と。

一八九五年ほど、シャーロック・ホームズが精神的にも肉体的にも好調だった年はない。
(「ブラック・ピーター」アーサー・コナン・ドイル著、日暮雅通・訳)

1895年。
それは、ホームズにとって最良の年だと言われている。
海外ドラマ「SHERLOCK」でも、ジョンのブログのアクセスカウンターは1895で止まったまま。
時が過ぎ、年齢を重ね、ホームズとワトスンがどれほど遠く離れても、1895年のすばらしい記憶がふたつの心を結びつける。
宝石のような、そんな思い出。
だから1895。

でもね、と猫さんはきみに言う。
それはホームズやワトスンに限った話ではないんだよ。だれの心にもその人だけの「1895年」があるんだ。
思い出すだけで心が温かくなるような、忘れかけていた大切な気持ちを取り戻せるような、そんな魔法のような記憶が。
昔の旅人はね、なにかに迷うと夜空を見上げて北極星を探した。いつも同じ場所できらきら輝いていてくれるから、それが旅の道しるべになったんだ。それと同じだよ。人も、猫も、それがあるから旅を続けられるんだよ。

だから映画を見た夜、あちきはこう言ったんにゃ。
この夏もたくさんの選手にアプローチして、

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名門チームからの自由契約者の告知。とくに2度にわけて大量放出したマンチェスター・シティは人材の宝庫! そのなかでも、18歳のキーン・ブライアン(*Kean Bryan)と19歳のジャック・バーン(Jack Byrne)はUEFA Youth Leagueでも活躍した有望株。

イエスと言われたり、

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ワトスン、ここにいたのかい!?(別人です。Declan Watson19歳)

ノーと言われたり、

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アーセナルからリリースされた宮市亮。「ごめんなさい。でもほんとハイドには興味ないです」。ですよね! 新天地でもがんばってね。応援してますにゃ。

監督になって2年目。
良いことも悪いこともあって、これからもどうなるかわからない。
だけど、いつか2015年という年を振り返ったとき、その記憶でひとりと一匹がほっこり温まるような、そんな1年にしよう。
今年だけじゃない。
2016年も2017年も、ずっとそんな年にしようよ。

トニーが助走を終える。
今シーズンの注目選手紹介が、いまはじまる。





*おまけ
ザ・ライフ・オブ・ブライアン
キーン・ブライアンについてはこのドキュメンタリーで。下部組織での練習風景などが見れます。