今シーズンの注目選手 2015-16

そして時間は動き出す。
トニーが何よりもまず最初にしたこと。
それはことばを発することだった

あ……ありのまま いま起こったことを話すぜ！
「おれは　選手紹介をしていた
と思ったら、いつのまにか１話分すっとばされていて、
おれが１秒前まで座ってたベンチがひっくり返されてる」
な……何を言っているのか　わからねーと思うがおれも　何をされたのか――

いやいや、とトニーは自分につっこみを入れる。ほんとは気づいてました！
時間がとまってたんだろ。夢の中みたいなあやふやな感じだったけど、意識はあったぜ。話もちゃんと聞こえてた。カレーのルーとかの話をしてたよな（＊してません）。
魔法がルールみたいなものだって？ 人間社会の決まりごとのようなものだって？
だとしたら、いくら魔法でも、心の動きまでとめられるはずがねえ。法律とか常識とか、上司の命令とか恐怖政治とか（うちの奥さんとか）。ああ、びびって足がすくんじまうかもしれないよ。すぐには動き出せないかもしれないさ。でも、おれらが考えたり思ったりすることはだれにもとめられない。おれらの気持ちまではいじれないんだ。おれのこの「選手紹介したい」って気持ちをだれもとめられないようにねっ！

まずは新加入選手からいってみよう！

キーン・ブライアン（Kean Bryan）
このオフ最大の補強といっていいだろう。マンチェスター・シティから放出されたところを契約した。もちろん移籍ゼロ。年俸はチーム最高額の39000ユーロ（約530万円）。攻撃的なミッドフィールダーでレフティー、18歳。パスとひらめきに優れ、コンディションの安定度もすばらしい。運動量も十分にある。昨シーズンのUEFA Youth Leagueで活躍した有望株で、現時点ですでに５部リーグ最高クラスのタレントだ。しかも、能力値以上に点をとるといういうわさもある。

ジャック・バーン（Jack Byrne）
キーンと同じくシティから移籍ゼロで獲得。技術とダイナミズムが融合した、総合力の高いインサイドハーフだ。UEFA Youth Leagueでは８試合６得点と活躍。日本の専門誌「ワールド・サッカー・ダイジェスト」でも（ちいさく）取り上げられていた。人材不足のアンカーをこなせるのもでかい。

シナン・バティチ（Sinan Bytyqi）
シティから３ヵ月間の短期レンタル。スカウトは「不確定要素が多すぎる」と反対したが、それを押し切る形で獲得したそうだ。年齢は20歳。ドリブルとテクニックに「いいね！」。クロスにも光るものがある。本職のトップ下よりもサイドで活きるとおれは思う。Youtubeの動画では右足のフリーキックで有名（なぜか画像では左利き？）。この選手との契約がきっかけである問題がうきぼりになるわけだが、それについてはまた後日。

ラッセル・グリフィス（Russell Griffiths）
19歳のGK。エバートンからのレンタル。昨季の守護神ビリー・オブライエンのあとがまだ。足元の技術に優れたスイーパー型キーパーで、ポゼッションを軸としたハイドのスタイルにぴったりはまるだろう。さすがにビリーには及ばないものの、６部や５部ではもったいないほどの能力の高さ。すまん。能力値の画像は取り忘れちまった。

ライアン・オライリー（Ryan O'Reilly）
ストーク・シティからレンタルさせてもらったセンターバック。足がはやい。ハイドはディフェンスラインが異常に高く、それでいて左CBのリアム・チーバーは足がとことん遅い。リアムとライアンをCBのペアにすることでバランスは格段によくなるはずだ。ラッセルと同じく、能力値の画像は取りわすれたもよう（ううっ……）。
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身振り手振りをまじえ、踊るように選手紹介するトニー。
「すげえ」
それを横目で見ながら、ウィギンスはひっくり返ったイスやベンチを片づける。
ベンチが元の位置にもどると、そのうえにぴょんと飛び乗る猫さん。ウィギンスもあとに続く。腰をおろし、汗をぬぐい、息を整える。
たっぷり１分数えてから、ウィギンスは話しはじめた。
「うるせえなあ、と思うこともあるよ。こう、がちゃがちゃした感じ？ だいたい、ふつうやらないでしょ。ハードスタイルダンスしながら選手紹介とか」
猫さんはいつのまにか寝入っている。だれも聞いていないことを確認すると、ウィギンスは自分の想いをことばにした。
「おれはね、たぶん、あのおっさんのこときらいじゃないんよ。いろいろなこと言うやついるよ。あからさまに下に見るやつもいる。いい年してどうのこうの、球遊びがどうのこうの。だからおれはそういうとき言ってやるんだよ。好きなことを好きっていうことの、なにがわるいんだよって。フットボールに熱くなってなにがわるいんだよって。おれもおまえも、彼女とか奥さんとかに土下座してまでやりたいことあるんか？ ないだろって」
シャツの胸ポケットで、猫さんからあずかった猫じゃらしがきらきら輝いている。
「うそつきばっかりじゃん」吐きすてるように言う。「もちろんおれも含めてだけどさ。ごまかしてばっかりですよ、ほんと。毎日まいにち、気づかない振りふりー、わからない振りふりー。そんな感じで、だんだんなにを「振っている」のかさえわからなくなってきてさ。好きとかリスペクトしてるとかそういうことじゃなくて、すくなくともあの人、へんにごまかしたりしないでしょ。とりつくろったりしないでしょ。そういうのうらやましくなったりしない？ あの人がばかだっていうなら、それでいいんだよ。ばかのままで。あの人はそのままでいい。ほんと変なんだけど、こうやって話したせいか……ん、あれ？」
ウィギンスは眠っている猫さんをゆさゆさ揺すった。
うーん、うーん。
「魔法でルート化すればいいんじゃね？ いやいや、というか、魔法でほかの機種出せばいいじゃん！」
むにゃむにゃのむにゃー。
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ふう。
思ったよりきついなこれ、ハードスタイルダンスっての？
いつが止めどきなのよこれ。
お、おつぎは１年目からのメンバーだ。画像がないものもあるから、はあはあ、前シーズンの記事（「今シーズンの注目選手」）も、はあはあはあ、読んでっ！

ブライス・ワシ（Brice Wassi）
14-15年シーズンの６部リーグMVP。18歳のインサイドハーフ、というか永遠の悪ガキ。しょっちゅう監督とけんかしてたなあ……。ロッカールームではプロ意識のかけらもないが、ピッチのうえではやたらと献身的というふしぎ。スタミナを含めた身体能力はばつぐんで、攻撃にかたよりすぎるチームが機能していたのは、こいつが走りまわってくれるおかげだった。アンカーもこなせる点も◎。

リアム・マースデン（Liam Marsden）
不動の右サイドバック。選手レポートに「ケガが多い」とあるが、なぜか故障と縁がない。スピードと運動量をかねそなえ、クロス能力が高い。右SBに攻撃力とクロスの質を求めるハイドには最適な選手だ。

リース・グレイ（Reece Glay）
ハイドのメッシとはこの男のこと。昨季の得点ランキング２位は立派だが、なによりすばらしいことにケガをしない！ 上位クラブに引き抜かれそうになっていたので、サラリーアップ（年俸３万ユーロ[約400万円]）で引きとめた。能力値は前シーズンからそれぞれ＋１ずつ成長している。まだまだ伸びる？

ジェームズ・ダービシャー（James Derbyshire）
昨シーズン同様、トニーさまオススメの選手だ（画像は「今シーズンの注目選手」で確認してくれ）。元マンチェスター・ユナイテッドの選手。本職は中盤だが、ほぼすべてのポジションをこなす。下部リーグは交代枠が５つしかないから、このタイプはほんと貴重だぜ（去年からまったく成長していないのが気になるが）。


トニーの先発予想

栄光の10番を背負うのはリース・グレイ。false nine（偽の９番）として、相手守備にこんらんをもたらす。左WGはホワイトハウスではなく、マーティン・サミュエルソンと予想する（マーティンについてはいつか話す機会あるかもだ）。左CBはリアム・チーバーの間違いだが、どっちにしてもリアムはケガ多いからなあ。
こまかい戦術については「こわいのは嫁だけ、ふつうに猫と話します」を読んでくれ。いつかまたくわしく「紹介」するだろうが、あの監督、基本路線はかえてない。

うーん、なにかだいじなことを忘れているような気もするんだが……ま、いっか。
さすがのおれさまも踊り疲れたぜ。
とにかく2015-16年シーズンのはじまりだ！
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むにゃ。
トニーが見落とした「なにか」。
むにゃむにゃ。それが、チームにおおきな影響を及ぼすことになるのです。
またにゃー。
むにゃむにゃらー。